公園の池のほとりや、水辺の散策路を歩いていると、まるで地面からニョキニョキとタケノコのような、あるいは不思議な生き物のような、こぶ状のものが突き出しているのを見たことはありませんか?そしてその近くには、すらりとした円錐形の、美しい樹形の木が立っているはずです。

その木の正体は「ラクウショウ」。漢字では「落羽松」と書きます。
どこか異国の雰囲気を漂わせ、一度見たら忘れられないそのユニークな姿。今回は、公園の人気者でありながら意外と知られていない、ラクウショウの fascinating な生態と、季節ごとの観察ポイントを、余すところなくご紹介します。この記事を読めば、次から公園を散歩するのが何倍も楽しくなること間違いなしです。
ラクウショウって、そもそもどんな木?
まずは、ラクウショウの基本的なプロフィールから見ていきましょう。
- 分類: ヒノキ科ヌマスギ属の落葉針葉樹
- 和名: 落羽松(ラクウショウ)
- 英名: Bald cypress (ボールド・サイプレス)
- 原産地: 北アメリカ南東部の湿地帯
ラクウショウは、名前に「松」とついていますがマツ科の仲間ではなく、ヒノキやスギに近い仲間です。そして、針葉樹でありながら秋になると葉を落とす「落葉樹」であるという、少し変わった特徴を持っています。
和名の「落羽松」は、その葉の落ち方に由来します。秋になると、細長い葉がついた短い枝ごと、ひらひらと舞うように落ちていきます。その様子が、まるで鳥の羽が舞い落ちるように見えることから、この美しい名前がつけられました。
一方、英名の「Bald cypress」は「禿げたイトスギ」という意味。これも冬になると葉をすべて落とし、枝だけのがらんとした姿になることから名付けられました。どちらの名前も、この木の「落葉する」というユニークな性質をよく表していますね。
日本にやってきたのは明治時代。その美しい樹形と、湿地でも元気に育つ丈夫な性質から、公園の景観樹や街路樹として全国に植えられるようになりました。
ラクウショウの生態の3つの不思議
ラクウショウの魅力は、なんといってもその独特な生態にあります。ここでは、特に注目したい3つの不思議に迫ってみましょう。
不思議①:地面から生える謎の物体「気根(きこん)」
ラクウショウを最も特徴づけているのが、木の根元から地面を突き破って現れる「気根(きこん)」または「呼吸根(こきゅうこん)」と呼ばれる器官です。膝を曲げたような形に見えることから「膝根(しっこん)」とも呼ばれます。
この気根の役割については、実はまだ完全には解明されていません。しかし、最も有力な説は、その名の通り「呼吸」を助けるためというものです。
ラクウショウの故郷は、ミシシッピ川流域のような、常に水に浸かっているか、非常に水分の多い湿地帯です。こうした土地の土壌中は酸素が極端に不足しています。そこで、地中にある本体の根が酸欠にならないよう、地上に気根を伸ばして、空気中の酸素を取り込んでいると考えられているのです。
また、もう一つの説として、湿地という不安定な地盤で、巨体をしっかりと支えるための「支え」の役割があるとも言われています。気根が地面をがっちりと掴むことで、風や水の流れで木が倒れるのを防いでいるのかもしれません。
この気根は、ラクウショウが植えられている環境によって、その姿を大きく変えます。特に水分が多い場所では、大きく、数も多くなります。一方、乾いた土地に植えられたラクウショウは、気根をほとんど出さないか、出しても非常に小さいことがあります。公園を訪れた際は、池のすぐそばのラクウショウと、少し離れた場所に植えられたラクウショウの気根を見比べてみると、その違いがよく分かって面白いですよ。
不思議②:「落羽」の名にふさわしい美しい紅葉と落葉
針葉樹といえば、マツやスギのように一年中緑の葉をつけている「常緑樹」をイメージする方が多いでしょう。しかし、ラクウショウは、イチョウやカエデなどと同じように、秋になると葉を落とす「落葉針葉樹」です。
秋が深まる11月頃、ラクウショウの葉は、鮮やかな緑色から、温かみのあるオレンジ色やレンガ色へと美しく染まっていきます。そして、いよいよ落葉のシーズン。前述の通り、ラクウショウは葉が一枚一枚散るのではなく、細長い葉が左右にきれいに並んだ小枝ごと、はらりと落とします。
地面に落ちた枝は、まさに鳥の羽そのもの。ぜひ足元に落ちている「羽」を拾ってみてください。その精巧な自然の造形に、きっと感動するはずです。冬の間、葉を完全に落としたラクウショウは、空に向かって伸びる枝ぶりがよく見え、凛とした佇まいで、夏とはまた違った力強い美しさを見せてくれます。
不思議③:意外と知られていない花と実
春、ラクウショウはひっそりと花を咲かせます。3月から4月頃、枝先からブドウの房のように垂れ下がっているのが雄花です。花粉をたくさん飛ばしますが、あまりにも地味なので、気づかずに通り過ぎてしまう人がほとんどかもしれません。
雌花は雄花の近くに、ごく小さくつきます。そして受粉が終わると、秋にかけてゆっくりと実を大きくしていきます。


ラクウショウの実は「球果(きゅうか)」と呼ばれ、直径3cmほどの緑色の球形をしています。表面はゴツゴツとしていて、熟すと茶色くなり、やがてバラバラに壊れて種子を散布します。公園のラクウショウの木の下で、この丸くて可愛らしい実を探してみるのも楽しい観察です。
季節をめぐる!公園でのラクウショウ観察ガイド
ラクウショウは、一年を通して私たちに様々な表情を見せてくれます。季節ごとの観察ポイントを知って、公園散策をもっと楽しみましょう。
- 春(3月~5月)
- 新緑: 冬の眠りから覚め、鮮やかな黄緑色の新芽が一斉に芽吹きます。みずみずしい若葉は生命力に満ち溢れ、見る者の心を明るくしてくれます。
- 花: 枝先をよく見ると、茶色く垂れ下がった雄花が見つかるかもしれません。
- 夏(6月~8月)
- 深い緑と木陰: 葉が生い茂り、深い緑色の涼やかな木陰を作ってくれます。空に向かってまっすぐに伸びる、美しい円錐形の樹形全体を眺めるのに最適な季節です。
- 気根の観察: 緑の葉とのコントラストで、地面から突き出す気根の存在感が際立ちます。
- 秋(9月~11月)
- 紅葉: 最大の見どころ。緑からオレンジ、そしてレンガ色へと移り変わるグラデーションは圧巻です。特に晴れた日の青空に映えるラクウショウの紅葉は、絶好の被写体になります。
- 落羽: 舞い落ちる葉や、地面に敷き詰められた「羽」の絨毯を観察しましょう。
- 球果: 木の上や足元で、丸い実を探してみましょう。
- 冬(12月~2月)
- 裸の樹形: 葉を落とし、枝だけの姿になります。幹の太さや枝の伸び方がよく分かり、木の骨格の美しさを堪能できます。
- 気根の存在感: 周りの草が枯れるため、気根のユニークな形が一年で最もよく観察できる季節です。

【応用編】メタセコイアとの違いを見分けよう!
ラクウショウと非常によく似た木に「メタセコイア」があります。メタセコイアも同じくヒノキ科の落葉針葉樹で、樹形もそっくりです。見分けるポイントは「葉のつき方」です。
- ラクウショウ: 葉が小枝に対して「互い違い」についている(互生)。
- メタセコイア: 葉が小枝に対して「向かい合って」ついている(対生)。
ぜひ、地面に落ちている葉(小枝)を拾って、見比べてみてください。まるで理科の実験のようで、新しい発見があるはずです。
おわりに
何気なく見ていた公園の木も、その生態や歴史を知ると、全く違った存在に見えてきます。ラクウショウは、その不思議な気根、美しい紅葉、そして季節ごとの変化に富んだ姿で、私たちに自然の面白さや奥深さを教えてくれる、素晴らしい樹木です。
次に公園を訪れた際には、ぜひラクウショウの木を探し、その足元に立ち止まってみてください。そして、ゆっくりと時間をかけて、そのユニークな姿を観察してみてください。きっと、今まで気づかなかったたくさんの魅力に心を奪われることでしょう。



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